リオデジャネイロオリンピック、テニス男子シングルスは14日、ブロンズメダルマッチが行われ、日本の錦織圭がスペインのラファエル・ナダルにセットカウント2-1で勝って、見事銅メダルを獲得しました。
ナダルとの死闘のハイライトを余すとこなく解説します。
🎾本記事のサマリー
第1セット(43分)
緊張感漂う立ち上がりは両者ミスが目立った。
両者11度目の対戦は五輪の舞台、ブロンズメダルマッチ。緊張の中、過去に1勝9敗という圧倒的な実力差を見せつけられ、苦手意識のあるナダルとの試合に臨む錦織。立ち上がりの第1ゲームは互いにミスが目立った。
キープ合戦が続く。
第1ゲームから第4ゲームは互いにキープ合戦。
第5ゲームに転機が訪れた。
錦織は第5ゲームで最後ナダルの頭上を超す鮮やかなロブを決めてブレークに成功。
第1セットは錦織がゲームカウント6-2で先取。
その後、第7ゲームもブレークし、第8ゲームでは最後にワイドへのサービスエースを決めて、43分でこのセットを先取。
第2セット(1時間16分)
好調な錦織、2度のサービング・フォー・ザ・マッチを迎えるも…。
第2セットも好調な錦織。第3・第7ゲームでナダルのサービスゲームを破り、2度のサービング・フォー・ザ・マッチを迎えるも、焦ってミスを連発し取りきれず。
「一番は硬くなりましたね。彼のプレーがよくなったのも半分ありますけど、メダルを意識してしまったのはもちろんある。サーブからストロークも少し焦りが出て、さすが大舞台だなと。」-錦織(試合後に第2セットをふりかえって)
ギアを上げた北京五輪王者ナダルが猛追。
しかし、ナダルは猛攻で錦織にプレッシャーをかけ、第8・第10ゲームはブレークバックを許して、4ゲームを連取。ゲームカウント5-5と追いつかれ、タイブレークへ。
第2セットはナダルがゲームカウント6-7 (1-7)で取り返す。
タイブレークは錦織のミスショットが目立ち、最後は錦織のリターンがネットにかかり、ナダルが7-1で圧倒する。セットカウント1-1に。
第3セット(50分)
トイレットブレークに苛立つナダル。
ファイナルセット開始前、ナダル、錦織共にトイレットブレークを取る。しかし、いち早くナダルが戻ったのに対し、錦織が戻らず、ナダルのいら立ちが募った。「12分間も試合が中断して、どうなっているんだと審判に尋ねた」とナダルは試合後にコメント。中継でも審判に抗議している様子が映されていた。
一方、トイレットブレークで気持ちを立て直した錦織
「ナダルがすごくいいテニスをしてきた。5-2までとは違ったアグレッシブなプレーだったり、サーブもよくくなってきたり。少しあれを続けられたら、ファイナルもまずいかなというのは、ずっと頭の中にあった。先にブレークを取れたことで少し余裕もできて、1セット目みたいなどんどん自分が攻めるプレーを、リードしたことでより自信を持ってプレーできた」-錦織(試合後にトイレットブレークをふりえって)
強烈なエッグボールで攻めるナダル。
ファイナルセット序盤はナダルが第2セットからの勢いにのって試合を有利にすすめる。
第3ゲームで流れを引き寄せた錦織。
ナダルに流れが傾きかける中、粘る錦織が第3ゲームでブレークに成功する錦織。
「いやー、あんま覚えてないですね(笑)。1ゲームから攻められているのを感じていたし、自分のサービスゲームも苦労して取っていたので。さっきも言った通り、このままではまずいなというのはあったが、彼のミスもあったり、ディフェンスがしっかり返ってくれたので、思いも寄らぬブレークではあった。その後、本当に集中して入りましたね。5-2のこともあったので。本当に1球1球。今日はサーブがよかったので、それを信じてプレーしていた」-錦織(試合後に第3ゲームをふりかえって)
悲願のメダルまであと1ゲーム。
錦織がバックハンドウィナーを決め、サービスキープに成功。錦織メダルまであと1ゲーム。
最後は強烈なサービスエースで2ポイント連取
ワイドへのサービスエースが決まり、錦織は40-15でマッチポイントを迎える。そして、最後はナダルのボディへの強烈なサービスが決まり、試合時間2時間49分でゲームセット。
2時間49分の死闘の末、ナダルを破った錦織。
第4シードの錦織圭は第3シードのナダルをフルセットで敗り、悲願の五輪メダリストに。ナダルは北京五輪で金メダルに輝くも、二度目のメダルとはならなかった。(ダブルスはM・ロペスと組んで金メダルを獲得)
錦織圭 | 6 | 61 | 6 | 2 |
ナダル | 2 | 77 | 3 | 1 |
ラファエル・ナダルのコメント【試合後】
仮に100%の力が出せる状況だったとしても、錦織との対戦で勝つというのはすごく難しい
「錦織のプレーは素晴らしかった。エネルギーの限界だった。持っている力はすべて出し尽くしたよ。考えてみてよ、仮に100%の力が出せる状況だったとしても、錦織との対戦で勝つというのはすごく難しいことだろう? だから、僕は4位という結果に満足しているよ。金メダルを目指して戦ってきたけど、それが敵わなかった。より強くなるためにもっともっとやらなければいけないことがある」-ナダル
「ATPツアーの方がずっといいね。痛めていた手首の状態が悪くならなかったことは良かったことのひとつだね。(全仏後の)2月半プレーできなかった状況から復帰して、世界最高の舞台で最高の選手たちとしのぎを削れたことは嬉しく思う」-ナダル
男子複で金メダルを取って、国歌を聞くことができた。
「男子複で金メダルを取って、国歌を聞くことができた。だからといって、じゃあ4年後の東京でまた勝てるかという話じゃないよ。健康でありさえすれば、3年前の自分と比べても衰えているとは思っていないけど、まずは健康を維持すること。それがうまくできれば、東京五輪にいくことができると思うよ」-ナダル
錦織圭のコメント【試合後】
気力を振り絞って銅メダルをゲット
「第2セットで5ー2とリードし、目の前に勝利があったのにセットを落としてしまい、気持ちを立て直すのが難しかったが、最終セットでは第1セットのようにどんどん前に入ってプレーすることを心がけた。気力を振り絞って銅メダルをゲットできたのですごくうれしかった」-錦織
「素直にうれしいですね。特に5-2から逆転されて何回も気持ちが折れそうになったので、ファイナル(セット)はしっかり気持ちを切り替えて。メダルももちろん懸かってますし、日本の声援だったりチームの声援も自分の力となって戦えたので、率直に今日は勝ててうれしいですね」-錦織
メダルのチャンスを意識していた
「オリンピックにかける思いは人一倍あったと思うし、3回目のオリンピックで今回はメダルのチャンスがあると意識していたので、メダルにかける思いも強かった。日本で96年ぶりというのも多少意識した」-錦織
「この大舞台でリードし、すごく硬くなって緊張したが競り勝つことができたので、すごく大きな経験値になる」-錦織
ジョコとアンディにまだまだ何もできないんだな
「想像以上に出し過ぎちゃいましたね。けっこう限界に体は近いので。この3位決定戦という大きさ、大事さというのも頭に入っていた。昨日の悔しい負けが、またアンディにあんなに簡単に負けるんだという、ジョコとアンディにまだまだ何もできないんだな、というのですごくショボンとしてしまったので。その中からチームの後押しがすごく大きかったですね。どっちみち最後の試合ですし、思いっきりプレーして自分らしいプレーを心がけるっていうのだけを頭に入れて。全米オープンは様子を見ながらですね」-錦織
確実にレベルアップしている
「結果もそうだが、確実にレベルアップしているというのは感じた。テニス的にもそうだし、自信がついてこれだけプレーできてるというのも、本当に4年前とは違った。前回(ロンドン大会で)ベスト8でけっこういったな、というのは自分の中にはあったので、ベスト4でもあんまり満足しないというか、当たり前というか、そういう位置にきてるんだなというのは感じていた。4年後どうなってるか分からないですけど、もっともっと強い気持ちで、強くなってまた、臨みたいですね」-錦織
マレーが「金」、デルポトロが「銀」、そして錦織が「銅」
マレーがロンドン大会に引き続き、史上初の五輪連覇
リオ五輪を制したのは、錦織が準決勝で完敗した、前回大会チャンピオンのマレー。決勝のデル・ポトロ戦は盤石の試合運びで、7-5, 4-6, 6-2, 7-5で金メダルを勝ち取った。銀メダルのデル・ポトロはジョコビッチ、ナダルを破っての決勝進出で、完全復活を世界にアピールした。
日本人テニス界、96年ぶりのメダル快挙。
日本人選手のメダル獲得は、1920年アントワープ大会で熊谷一弥が男子シングルスで銀、熊谷が柏尾誠一郎と組んだ同ダブルスで銀メダルを獲得して以来、96年ぶりの快挙。
まとめ
遂に大舞台でBig4の厚い壁をこじ開けた錦織圭。残りのマスターズ3大会(シンシナティ、パリ、上海)と最後のグランドスラム全米オープンでの更なる飛躍が期待されます。96年ぶりのメダルを日本のテニス界へありがとう、錦織圭。そして、心からおめでとう!
五輪の舞台で遂に見えた圭の”頂点への道”
「夢は世界チャンピオンになること、小学校の卒業文集に、そう記した。」
【オリンピックテニス関連】