世界6位の錦織がウィンブルドンの舞台だけ勝てないのは何故なのか?
1995年の松岡修造以来のベスト8入りは勿論、それ以上の結果を期待される世界6位の錦織ですが、最高成績ベスト16という厳しい結果が続いています。その答えは…芝ならでは4つの理由から解説します。
🎾本記事のサマリー
錦織圭 ウィンブルドンの成績一覧
「ここで結果を出したいというのは、やっぱり頭には常にありますね。以前フレンチでなかなか結果が出なかったのと同じように。最低やっぱり、ベスト8、4に入るのを目標としています」-錦織圭
ウインブルドンは、錦織が唯一ベスト8以上に進めていないグランドスラムです。当然ながらトップ10プレーヤーとして、この現状にもちろん満足しているわけではないでしょう。2015、2016年共に第5シードで出場し、その活躍が期待されていましたが、故障に悩まされ2大会連続棄権という辛酸を舐めさせられています。
年 | 結果 | 敗退相手 |
2007 | 不参加 | – |
2008 | 1R | M・ジケル |
2009 | 不参加 | – |
2010 | 1R | R・ナダル |
2011 | 1R | L・ヒューイット |
2012 | 3R | JM・デル・ポトロ |
2013 | 3R | A・セッピ |
2014 | 4R | M・ラオニッチ |
2015 | 2R | S・ヒラルド(棄権) |
2016 | 4R | M・チリッチ(棄権) |
勝率が示す、錦織の芝への苦手意識
「芝に入ると、自然と敵がなんか強く見える」-錦織圭
錦織圭のサーフェス別勝率は、クレーが「.718」、ハードは「.688」、そして芝は「.581」。やはり数字的には、芝がもっとも苦手なサーフェスだと言えます。他のグランドスラムではすべてベスト8以上に勝ち進んでいますが、ウインブルドンだけはベスト16が最高成績です。
「(グラスシーズンが)なかったらな~とまでは思わないですけど、今のところは(グラスが)そんなに好きではないですね。まだ、自分の中でしっくりいくテニスが100%見えていない。ハードやクレーコートに比べて、そこがやっぱりまだモヤッとしたものが正直ありますし、試合で勝っていって、さらにいいテニスができてくれば、より好きになるでしょう」-錦織圭
芝で勝てない理由1. 俊敏なフットワークが活かせない

世界屈指のフットワークのコントロール力を持つ錦織。
「芝でのフットワークは楽ではないですね。あんまり粘ってプレーすることができないので。フットワークがカギになります。だんだん良くはなってきてはいます」-錦織圭
得意なハード、クレーで錦織の武器の1つとなっている”俊敏なフットワーク“は、芝の舞台では大きなアドバンテージとはなりません。芝に足を取られてスタートや切り返しの動きは遅れがちで、持ち前のクイックネスを最大限生かすことができないのです。
錦織選手が178センチという決して恵まれてはいない体格で世界トップで戦える一番の要因は、フットワークです。錦織のフットワークは、他の選手のモノとは全然違います。錦織の凄さは色々ありますが、その全てのベースにあのフットワークです。ハードで力強さも出せれば、クレーコートで柔らかさを出せる。そのフットワークの「コントロール」こそが錦織の真骨頂と言えます。
現世界№1のジョコビッチの柔軟なフットワークも天性のもので素晴らしいですが、錦織のそれも違った意味で天性のモノではないでしょうか。力強く守るとき、少しリラックスして力を抜いているとき、そして一気にギアをあげて回転数を上げて速く走るとき……。その使い分けが、本当に素晴らしい。動き方に関しては世界屈指の選手です。
芝で勝てない理由2. 得意のリターンが活かせない
「なかなかブレークは難しいと思いますけど、リターンがカギになりますね。セカンドサーブのときに、どれだけリターンを返せるかカギになります。なるべくストローク戦に持ち込んで、プレーできれば……」-錦織圭
サービス側が絶対優位のテニスにおいて、勝負所でのリターンエースにはただの1ポイント以上の価値があります。しかし、ウィンブルドンのような天然芝のグラスコートではボールのバウンドが速く、ラオニッチなど長身で高速サーブを持った選手が有利というのが常識です。リターンが得意でそこを起点として展開を組み立てる錦織にとって、決して楽なサーフェスではないことは確かです。
クレーで元気のなかった選手も、サーブとストロークの爆発力があれば、急に水を得た魚のごとく強くなれるのがウィンブルドンなのです。
芝で勝てない理由3. 打点が下がって中に入りずらい
「バウンドが低く球の速さも上がるので、ボールが食い込んできて打点が下がる。特にスライスが伸びてきて打点が下がってしまう。そこが難しい」
錦織のテニスはコートの中にどんどん入っていって、速いタイミングでボールをとらえて相手の時間を奪うかのように攻めます。このプレースタイルは、近年のサーフェスが速くなりつつあるテニス界の新しい潮流の一つです。
178センチの錦織が他のトップ選手達との戦いで身体的不利を感じさせないのは、コートを平面でなく、立体的に捉え、さらにそこに“時間”と“間合い”の概念を持ち込んでいるからです。ベースラインからどんどんコート内に入って行き、間合いを詰めて相手の考える時間、予備動作の時間、スイングの準備時間をどんどん奪っていく。つまり、ラリーを重ねる毎に錦織自身が有利なパータンを作り出し、後手に回った相手は精神的にも追い詰めていくのです。
しかし、芝のサーフェスではボールの弾道が低く、着地と共に一気に手元で伸びて来ます特にスライスに代表されるような伸びて滑るショットが最たる例です。そうなると、バードやクレーと同じ打点で打つには難しくなります。また、ボールが滑ったりイレギュラーし易いので、差し込まれて打点が下がり気味になってしまい、結果としてコートの中に入るのが一層困難になります。
芝で勝てない理由4. ストロークからの展開力が活かせない
錦織のテニスは、左右共に鋭いグランドストロークでコートを広く使いながら、積極的にベースライン内に入っていき、機を見てはネットプレーを絡め、ドロップショットを交え,,,といった風にアイデアに富んだ展開力が大きな魅力です。
前述の理由1「アジリティの低下」、理由2「リターン力の低下」、理由3「ポジションの後退」が背景にあり、錦織自身の得意な展開に持っていくことが難しいのです。2014年に全米準決勝で世界№1のジョコビッチを破った試合は、まさに展開力の賜物で錦織の全ての長所が最大限活きたゲームでした。
それでも、ウィンブルドン優勝の可能性はある!
以上、錦織圭がウィンブルドンの舞台で未だ結果を出す事が出来ていない理由を解説しました。しかし、アグレッシブリターナーの錦織がウィンブルドンで優勝する可能性は確かにあるのです。
その続きは、錦織圭がウィンブルドンで優勝する3つの可能性!GS初優勝はアガシと同じ全英の予感。で紹介します。
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錦織圭の著書
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