精神面からジョコビッチの「強さ」を徹底解説【メンタル編】

ノバク・ジョコビッチの強さの秘密は一体何なのか?

テニスはメンタルスポーツと良く言われます。どんなに身体能力が優れていようと、技術が優れていようと、精神的な強さが伴っていなければ、勝てないスポーツです。テニスは、一瞬で決断し、それを行動に移さなければならず、運動力学的に見ても難しいスポーツと言えます。また、絶え間なく駆け引きをしてボール打つ断続的なスポーツであるが故に、集中力を失いやすいです。以上の点から、テニスはメンタル面が重要なのです。

 

世界のトップともなれば、その技術の差は僅かもので毎回均衡した試合展開の中で、精神力の強さで試合結果が決まります。現在世界No.1(4年連続ATPツアーファイナル優勝)のジョコビッチの圧倒的強さの1つが、「メンタルの強さとその安定力」だと言われています。戦術、技術、身体能力にも優れていますが、恐らくジョコビッチの強さの最大の要因はこの精神的な強さでしょう。

今回はジョコビッチの強さの秘密をメンタル面から徹底解説します。ジョコビッチの強さの秘密を知りたい方必見!

 

①コソボ紛争の中、プロを目指し練習を続けた経験

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4歳からテニスを始めたジョコビッチは才能に恵まれ、10歳の時点で「僕はテニスを仕事としてやっているんだ。僕は世界No.1になるんだ」と答えています。11歳になった頃、コソボ紛争で2か月半もの間、地下室に避難しなければならないという壮絶な経験をしました。既に世界No.1を目指し、仕事としてプロ意識を持ってテニスに向き合っていたジョコビッチは、紛争中にも関わらず空爆の舞台となった街のテニスコートで練習を続けました。

 

「(空爆の)2カ月間はほぼ毎日、頭上を飛行機が通り過ぎて行くテニスコートで1日を過ごしていた」「あえて空爆の跡地を選んで練習していた。同じ所は爆撃しないと思ったんだ」と振り返っています。間違いなく数多いるプロ選手の中でも、一際厳しい環境の中でテニスを続けて来た選手の一人でしょう。解説者の松岡修造とのインタビューの中でも、この体験の話が語られておりジョコビッチの驚異的な精神力を支える要因の1つだとされています。

このように才能、技術、身体能力以外の普段フォーカスされる事の無い”生い立ち”もジョコビッチの強さの秘密なのです。

 

 

②借金をしてドイツ留学を支援した家族

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紛争が激化するにつれて、セルビアの街でテニスの練習を続けるのが困難だと判断した両親はある決断をします。それは、ドイツへのテニス留学です。これは紛争を回避し練習機会を得るための苦肉の手段であり、決してよくあるスポーツエリートの留学ではありません。事実、戦争のせいで経済が悪化し仕事が激減。両親は高利貸しも含めて、様々なところから借金してジョコビッチをドイツへ留学させました。

 

むしろ、政情不安が極まるなか先行きの見えないセルビアを案じて、ジョコビッチの才能に賭けた両親が、文字通り全てを投げ打ってジョコビッチをドイツへ送り出した、と言ったほうが正しい表現かもしれません。ドイツに渡ってからの事を「自分はHow to playを学んだことはない、How to winを学んできた。ほかの子どもは、ボールの打ち方から入るけれど、僕は初めから勝ち方だけを考え、生き延びるためのテニスをした」と語っています。

 

14歳時点から”できるだけ少ない試合で、最短距離でトップまで登りつめる”ということ計算して、プレーしてきました。送り出してくれた家族の為にも、仕事としてテニスを続けトップ選手にならなければいけない責任感を持っていたわけです。ロシアのマリア・シャラポワも似た例ですが、やはり決して豊かではない家族が自身の才能に賭けて身を削って投資し、支えられてきた選手は圧倒的なハングリー精神・サバイバル力を持ち合わせています。「すべてのプロテニス選手が富裕層のカントリークラブから出てくるわけではない」と著書で語っています。

 

 

③紛争を経験したセルビア人のアイデンティティ

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詳しくは割愛しますが、ジョコビッチの母国セルビアはコソボ紛争で「民族浄化」の悪者になってしまい、国際的に孤立してしまいました。そんな背景からジョコビッチは父親から次のような言葉をかけられて育ちました。

 

「コソボ戦争がはじまり、セルビア人は世界に非人道的な民族だと思われている。でも戦争というのは、一般の人々ではなく、政治のごたごたが原因で起きているのだ。ノバクにはミッション(使命)がある。お前が世界No.1になって、セルビア人は歴史があり文化もある、普通の民族であることを、世界の人々に伝えるのだ。」

 

ジョコビッチはセルビア人の国際的なネガティブなイメージを払拭しようと、国を、民族を、家族を背負ってコートに立ち続けているのです。紛争を経験したことで、セルビア人としての強烈なアイデンティティーを内に秘めています。彼がNo.1であり続ける秘めたる理由の1つです。

 

 

④結婚と出産「妻エレーナ・息子ステファンくん」の存在

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元々、精神的に強いと言われていたジョコビッチですが、時折ラケットを叩き付け折ってしまうほど我を忘れて激高したり、ボールボーイ(ガール)にキレたりする場面がしばしばありました。世界No.1の振る舞いとしては適切ではないと言われたりもしてきました。(ファンやメディアはどうしても王者フェデラーと比較してしまうわけですが…)

 

そんなジョコビッチでしたが、結婚と出産を機に夫となり父となったことで、人間的に精神的に大きく成長します。2014年7月に高校時代より8年交際した「エレーナ」さんと結婚、続く10月に第一子「ステファン」くんが誕生しました。家族の存在によってジョコビッチのメンタルのバランスが安定し、試合結果に如実に反映されています。驚くべきことに、2014年の10月に父親になって以降、出場した計17のグランドスラムとマスターズ1000の大会で、優勝12回、準優勝4回、ベスト41回という圧倒的な結果を残しています。(2016年2月時点)加えて、2015年にいたっては年間を通じて93%の勝率を誇り、ライバルのフェデラー、マレー、ナダルを圧倒しているほどです。

 

「家に帰れば、僕はもうテニス選手じゃない。父親で、夫だ。それが絶妙なバランスを作り出していて、その影響でプレーが良くなっているんだと思う」とコメントしています。このように、結婚し子供が生まれたジョコビッのプレーや振る舞いは以前に比べると、王者に相応しいものとなっています。家族の存在がジョコビッチを精神的に強くし、人間的に成長させたのです。

もっと詳しく>>>「ジョコビッチの強さの秘密妻・息子・家族の存在

 

日程大会・イベント結果
結婚・出産後のジョコビッチの主な試合結果
2014年7月12日「結婚」 妻エレーナさんと交際8年目で結婚
 2014年10月12日「出産」 愛息ステファン君誕生
2014年11月全米オープン(四大大会)ベスト4
2014年11月パリ(マスターズ1000)優勝
2014年12月ロンドン(ツアーファイナル)優勝
2015年2月全豪オープン(四大大会)準優勝
 2015年3月インディアンウェルズ(マスターズ1000)優勝
 2015年4月マイアミ(マスターズ1000)優勝
 2015年4月モンテカルロ(マスターズ1000)優勝
 2015年5月ローマ(マスターズ1000)優勝
2015年6月全仏オープン(四大大会)準優勝
2015年7月全英オープン(四大大会)優勝
2015年8月モントリオール(マスターズ1000)準優勝
2015年8月シンシナティ(マスターズ1000)準優勝
2015年9月 全米オープン(四大大会)優勝
2015年10月 上海(マスターズ1000)優勝
 2015年11月 パリ(マスターズ1000)優勝
 2015年11月 ロンドン(ツアーファイナル) 優勝
2016年1月全豪オープン(四大大会) 優勝

 

 

⑤ライバルであるロジャー・フェデラーの存在

ロジャー・フェデラー

ジョコビッチがプロデビューした2003年、フェデラーははじめてウインブルドンで優勝し一気に世界ランク2位に登りつめました。そして皆さんもご存知の通り、翌年2004年から”フェデラーの時代“が幕を空け、2007年まで302週に渡りNo.1として活躍しました。ジョコビッチはそんなフェデラーを、”本物のエリート”と評しています。

そのフェデラーが2016年現在も世界最高峰の選手として活躍し続けています。そして、キャリアの終盤に差し掛かっているにもかかわらず、ツアー選手の中で唯一ジョコビッチに対抗できる選手としてジョコビッチの前に立ちはだかり熱戦を繰り広げています。世界中のテニスもこの2人の対戦に熱狂しています。

 

かつてのナダルがそうであったように、フェデラーの存在がライバル達を刺激し、フェデラーに対抗すべく技術を磨き、男子テニスのレベルが向上したと言っても過言ではありません。現在、最強王者となったジョコビッチが刺激され、より高みを目指す理由にこのフェデラーの存在があるのは確かでしょう。自身のキャリア初期の世界No.1が、10年以上経って今も尚世界TOPのテニスのプレーの質を誇り、自身のライバルとして対戦しているのですから。

 

ジョコビッチはフェデラーについてこんなコメントを残しています。

‘He’s the reason why I’ve been successful’

「ロジャーに対する尊敬は計り知れないし、僕や他の選手の前でみせるゲームや、彼が達成してきたことを本当にすごいと思っている」

また一方のフェデラーも、「(ジョコビッチとの)ライバル関係は良好だ」「お互いに毎回厳しい試合を戦っている。試合を含めて、お互いについて理解することが勝利につながると思う」と語っています。

 

 

⑥グルテンフリーの食習慣を徹底

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もはや有名な話ですが、ジョコビッチはグルテンという植物性たんぱく質に不耐性を持っており、その事実に2010年の暮れまで気づいていませんでした。実家がピザ屋だったこともあり、ピザが大好きだったジョコビッチですが、テニスの為に大好きなパンやピザ、そのほか小麦製品を一切やめるグルテンフリーの食事生活を始めます。

 

食生活を変えてから、それまで朝起きてもまるで二日酔いのようなだるさ、常に頭に霧がかかったような状態が続くなどの悩みから一気に開放されます。目覚めた瞬間からやる気で満ち溢れ、その日一日が楽しみになり、テニスプレーのスピード、柔軟性、集中力が格段に向上しました。グルテンを断ったことは精神面にも良い影響ももたらし、試合中に不安なことがあったとしても前ほど気にとらわれなくなったとジョコビッチ本人が語っています。

もっと詳しく>>>「ジョコビッチの食事術。グルテンフリーで世界No.1に!

 

 

まとめ

いかがでしたか?

ジョコビッチの強さの秘密を解説するシリーズとして「メンタル面」について解説しました。戦争を経験し家族の唯一の希望としてテニス界で生き抜いてきた生い立ちが、ジョコビッチのハングリー精神や試合中の局面で勝ち切る強い精神力の原点なのです。サバイバル精神とも形容できるこの強さは、ライバルのフェデラー、ナダル、マレー達とは少し毛並みが違う理由なのでしょう。

 

だからこそ、強い。そして夫・父親になったことで、現在の精神な充実度がピークに高いと言われています。2016年、早速全豪オープンを制したジョコビッチを誰か止めることができるのでしょうか?このままだと、年間グランドスラムという偉業を達成し、年末にはナダルの持つGS優勝回数「14回」に肩を並べるのではないかと思います。

随時、ジョコビッチの強さについて「技術面」「戦術面」「身体能力面」の観点から詳しく紹介していきますので、お楽しみに。ジョコファンの皆さま、コメントお待ちしております♪

 

 

 

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